昨日は今年6回目の梨本塾。今回も40名の参加申し込みという超大盛況ぶり。
これだけ台数が集まると本当に色々あって、怪我をする人も出ることが多いんだけど、昨日は全体的にすごくクリーンな印象で、無事に終わってホッとしている。
ということで非常に気持ちよかったので、ちょっとした残り時間を使って、早いもの順(タイム的に、決勝結果的に、ではなく、マシンをピットロードに整列した順に)で参加者の方々のマシンに試乗して、それぞれアドバイスすることにした。
参加者のマシンはまさしく40人40色。同じ名前のマシンはあっても、同じフィーリングのマシンは一台もない。洗車度から始まって、ボルト類の締め具合、タイヤやブレーキなど消耗品の劣化度、セットアップなどで、持ち主のバイクに対する姿勢も少なからず見える(小説家などの常套手段でバイクや車を女性に例えることがあるが、そう考えると手にした女性を磨く、或いは大事にする、もしくは育てたり、自分好みにセットアップする、という風に解釈することも出来る。その逆も然り。実はオレ、こう見えても、車やバイクは非常に長く付き合うタイプで、それぞれ洗車もきちんとするのです。車は毎回洗車機だけどね)。
試乗したのは、かつての愛機であるCBR929RR(これ、やはり都民では名馬です。954RRや1000RRにない親しみやすさ、しなやかさが気持ちよかった)や,CBR600RR,CBR600F4S、ZX7R、ZX10R、R1、R6,グース、RGV250Γ、SV400,BMW1100RSなどなど。まるで一人マスターバイクみたいなデタラメな台数だけど、どれもこれも楽しいバイクばかりだった。
レーサーとして、というより、一人のバイク乗りとして、実はこういうトレーニングがすごく大切。
数周ごとにまったく違うカテゴリー、排気量のマシンに乗り、そこそこのタイムまで詰める、というのは、プロでもかなり至難の技なのです。装着タイヤ銘柄も分からないままに走り出すということは、つまり自分の感性だけに頼ることになるので、まさしく五感を研ぎ澄まさないと危なくて仕方がない。中にはシフトペダルが割り箸+ガムテープという猛者もいて・・・おい、JSBレーサーでそんなのに試乗するのは絶対にオレしかいないぞ!と思わず唸ってしまった。ただ、こういうギャップは個人的に愉快で、8耐のひのき舞台と割り箸シフトペダルに乗っている自分との落差が、多少自虐的な意味も含めて笑える。
その中で一番重要になってくるのは「どの位置に乗るのか?」ということ。そのマシンが求める乗車位置(これも、同じマシンでも各持ち主のマシンごとに違う)を即座に理解して(即座に、というのはピットロードから出て、1周目の1コーナーで理解するということです)それを実践する。当然アクセレーションに対する反応も多様なので、それを次の2コーナーで試す。ブレーキング反応は最終コーナーで試し、2周目にはそこそこのペースに持ち込み再確認、3周でおよその限界を知る、というやり方。都民モーターランドなら、これでおおよその市販車が理解できる。時間にして約1分30秒ということになるんだけど、ただこの1分30秒の内容が、通常の1時間半分くらいを超圧縮したものとなるので、楽しい。その上で「こうしたら楽しく速く走れるだろうな」というセットアップイメージも同時に構築する。
「レーサーなんだから、なんでもすぐ乗れる」わけではなくて、色々なことを知ろうとする、試そうとする人が、多様なバリエーションに対応し得るわけです。30過ぎの男性なら理解可能な特性の一つに「一つのテレビ番組をずっと見ることが出来ない」というのがあるけど、逆に言えば、自らを多チャンネル化することで、一つのシチュエーションの中で幾つかのバリエーションを構築することも可能なはず。一秒たりともリモコンを手放さす、5秒おきにチャンネルを変えてしまうという悲しいオスの性(この特性が何を意味しているかは、皆さん花街で実践済みのはずですね?)をポジティブに転化すればいいわけです。
というようなことを考えつつ、K-RUNでの全員分の走りを踏まえた上で、今週末の全日本選手権菅生のイメージを保ったまま走る、というようなウルトラコングロンマリット的な試乗をすると、こんなに豊かな時間はないよな、と思ってしまう。
歳を取るということは、デタラメな複合性の中で唯一無二の組み合わせを考えることに快感を覚える、ということと同義である場合もある。
13年ぶりくらいに試乗したグース改にて。山田さん、いつも写真ありがとう。